

Vol.23
国際会議で見えた
日本の医療の課題と未来
今回は、京都府立医科大学附属北部医療センターの救急医である大江熙先生と、初期研修2年目の井上芳樹先生が登場。世界医師会(WMA)の理事会・総会に併せて開催される若手医師による会議に参加した感想、現地での議論や気づき、今後に生かしたいことを伺いました。
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大江 熙 先生
京都府立医科大学附属北部医療センター 救急科 医長
Profile
祖母の「家族に医師がいたら」という何気ない一言に影響され医師を志す。現在は京都府医師会屋根瓦ワーキングチームで、研修医向けの教育にも携わっている。
大江 熙
先生
京都府立医科大学附属北部医療センター
救急科 医長
Profile
祖母の「家族に医師がいたら」という何気ない一言に影響され医師を志す。現在は京都府医師会屋根瓦ワーキングチームで、研修医向けの教育にも携わっている。
井上 芳樹 先生
京都第二赤十字病院 初期研修2年目
Profile
中学時代に学校の職業体験で福祉の現場で働く医師を見て、すばらしい仕事だと憧れ、医師を志した。現在は耳鼻咽喉科に関心を持っている。先進機器を使った治療についてしっかり学びたい。
井上 芳樹
先生
京都第二赤十字病院
初期研修2年目
Profile
中学時代に学校の職業体験で福祉の現場で働く医師を見て、すばらしい仕事だと憧れ、医師を志した。現在は耳鼻咽喉科に関心を持っている。先進機器を使った治療についてしっかり学びたい。

世界の働き方改革制度と現場のギャップを実感
大江先生(以下、敬称略):今回の会議に参加したきっかけは、京都府医師会
屋根瓦ワーキングチームのミーティングで紹介されたことです。「面白そうだ
な」と思って手を挙げ、2025年4月、ウルグアイの首都・モンテビデオで開催
されたWMA総会の若手医師の会議に参加しました。
井上先生(以下、敬称略):私は大江先生が参加された次の回、2025年9月に
ポルトガルの都市・ポルトでのWMA若手医師の会議に参加しました。会議
では、15ヵ国の方々とともに、私も日本の医師の働き方改革について発表し
ました。
大江:医師の働き方の問題は、私の会議でも話題にのぼりました。若手医師
の長時間労働やバーンアウトは、世界共通の課題だと実感しました。
井上:会議を通して感じたのは、どの国でも過重労働を規制する制度と実
際の働き方との間にギャップがあるということです。例えば、世界に先駆けて
労働時間を週48時間までに制限したEU諸国でも、超過勤務の実態があると知りました。一方、ミャンマーやフィリピン、韓国などアジア各国の参加者と話して、アジアの中では日本は先進的であると聞き、新鮮でした。
大江:確かに、日本は世界でも高齢化が進んでいる国です。日本が他の国
に先んじて、働き方改革にどのように取り組んでいくか、世界が注目している
だろうと思います。
井上:そのためには、チーム医療へのシフトも重要だと感じました。海外では
チーム医療が主流になっている一方で、日本では主治医制度が主流で、チーム医療についてはやや遅れを取っている印象です。
大江:チーム医療のメリットは大きいですが、方針の共有や引継ぎの質が担
保されないと、医療の質が下がる可能性もあります。制度とともにルールや
方針づくりの両輪で進めていく必要があると思います。
NCDsをテーマに各国の対策を話し合った
大江:私が参加した会議では、「非感染症疾患(NCDs)」をテーマに、悪性
腫瘍や生活習慣病、精神疾患などについて、各国がどのような対応をして
いるかを話し合いました。とりわけ強調されたのが、予防の重要性です。疾
患構造は国によって異なりますが、いずれNCDsが増えていくことは、どの国
にも共通しています。中には、砂糖の入った飲料の広告に制限をかけるな
ど、かなり踏み込んだ対策を取っている国もあって、そこまでするのかと驚き
ました。それでも壮年世代に対する啓蒙や予防によって、20年後、30年後
の疾患構造を変えていくことが重要だと再認識しました。
井上:ポルトの会議でも、NCDsは大きなテーマの一つでした。高齢化が進
む中で、医療費を削減する意味でも、予防医学的な対策は必須です。それ
に加えて、予防医学的な視点で患者数を減らしていくことは、患者中心の医
療を実現するという点でも、また医師の働き方の観点でも重要になっていく
と感じました。例えばイギリスでは、外来に1人あたり30分もの診療時間が
設けられていますが、日本では数分しか取れないことも珍しくありません。
大江:患者中心の医療の実現に向けて、会議では、複数のNCDsを持って
いる患者さんを横断的に診ることのできる医師が少なく、そのための研修プ
ログラムもあまりないことも課題に挙げられていました。日本でもキャパシティ不足から、そこまで手が回らない現状があると感じました。


世界各国の若手医師と
率直に話し合えたことが収穫
井上:今回の会議で良かったのは、発表する機会を得られたことです。研修
の傍ら資料を作成し、行きの飛行機の中まで準備に追われて大変でした
が、とても貴重な経験になりました。
大江:国際会議に参加して強く感じたのは、自分が「日本を代表している」と
いう意識です。私の発言や印象が、「日本の印象」になるかもしれないと思
い、事前に徹底的に準備することが、自国の医療や疾病構造について学び
直すいい機会になりました。何より上下関係などを気にせず、世界各国の医
師たちと率直に意見を交換し合えたことが、良かったです。
井上:私にとっては国際会議に参加することで、世界の中で日本の立ち位置
を客観的に理解できたことは大きな収穫でした。日本の働き方についても、
課題やマイナス面ばかりに目が行きがちですが、外に出てみて、先進的な面
もあることに気づきました。研修2年目になった今は、後輩の教育にも力を入
れています。ポルトで議論したことや海外の医療事情について、研修医の
仲間や後輩に伝えていきたいと思っています。将来は臨床だけでなく、海外に留学して勉強したいと考えています。今回の経験を経て、南米をはじめ魅力的な国がたくさんあることを知り、留学先についても視野が広がりました。
大江:私も救急医として救急医療に取り組むことに加えて、院内の教育に力を注いでいます。今後は、救急医療のスペシャリストを目指すとともに、救急科を窓口として院内の各科、院外の各機関や地域社会をつなぐ役割を担っていきたいと考えています。救急医療がスムーズに回る「潤滑油付き歯車」となって院内外をつなぐことで、小規模な病院であっても、患者さんが安心して医療を受けられる体制を構築することに貢献していきたいと思っています。
井上:これから医師を目指す後輩の皆さんにも、ぜひ海外に一人で行って、帰って来る経験をしてほしいと思います。きっと大きく成長できるはずです。
大江:今後ますます一人の患者さんを横断的に診る力が求められるようになっていきます。これから医師を目指す皆さんには、専門以外の分野にも関心を持つこと、さらに日本だけでなく、世界に目を向ける姿勢が大切だと伝えたいですね。
世界医師会(World Medical Association:WMA)は、1947年9月17日、パリにおいて27カ国からの医師が一堂に会し、第1回総会を開催したことを契機として設立された。WMAでは、医学教育・医学・医術および医の倫理における国際的水準をできるだけ高め、また世界のすべての人々を対象にしたヘルスケアの実現に努めながら人類に奉仕することを目的としている。WMAの使命の中心となるのは、健康促進と医師と患者間の良好な関係の促進である。WMAは、医療の幅広い分野において、WHOをはじめとする様々な国際機関と積極的な連携を図っている。(出典:日本医師会ホームページ)


令和8年度新研修医総合オリエンテーションを開催!
~京都府内全臨床研修指定病院の新研修医228名が一堂に会す~
4月3日(金)に新研修医総合オリエンテーションを京都市内のホテルにて開催しました。今回は京都府内の全臨床研修指定病院の新研修医228名に参加いただきました。
本オリエンテーションは、新研修医としての心構えや研修医の「スキルアップ」、「レベルアップ」、病院の枠を超えた「ヨコの繋がり(ネットワークづくり)」を目的としており、京都府医師会、京都府、臨床研修指定病院が協力して、研修医をサポートする取り組みの一つでもあります。
初期研修を乗り切る上で重要となる3つのスキル「コミュニケーション力」「検索力」「チームワーク力」を体感するグループワークを実施したほか、「Physician-Patient Communication(Will Save Us from Replacement byAI)」、「虐待の対応」をテーマとした講義を行い、今後の研修やキャリアにおいて重要な心構えを学ぶ機会となりました。また、当日はKMA.comを通じて入会の手続きを行った研修医に府医オリジナルスクラブを進呈しました。 KMA.comには、様々な研修会の情報や、動画コンテンツ、医賠責や医師年金など役立つ情報がたくさん掲載されておりますので、ぜひ、ご登録の上、ご活用ください。
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